それでも、あなたを愛してる。【終】
「ごめん、ごめんね。ふたりとも……僕がもっと強ければ、泉から出て来ようとする悪神も止められたし、依月だって……「あら。でも、貴方がいなければ、依月はあの夜に殺されていたのよ。その事実は変わらないわ?」……」
巡の言葉を遮って、泣き笑う悠依。
「貴方があの夜、泉への空間をこじ開けてくれなければ、悠生も助からなかった。負担が大きかったでしょうに。そのせいで、貴方はそんなに幼い姿になってしまったんでしょう?」
「……それは」
確かに、彼らに初めて会ったあの夜。
氷室家の最期の夜は、まだ、成人男性くらいの背丈だった。でも、能力を使いすぎたからかすり減って、今や、ただの童子。
「悠依の言う通り。君が何を悔いていたとしても、僕達が君を責めることはない。何より、この空間は君の空間だからかな?すごく居心地が良いんだ」
「……」
「ありがとう。巡。あなたがいたから、私は依月に『お母さん』って呼んでもらえたわ」
「うんうん。僕も『お父さん』って呼んでもらえちゃった。悠生のこれからも気になるし、何より、悠生のことも、依月のことも、生きている時に見れなかった分、もっと見ていたいし。隣には、悠依がいるから。別にここに縛られている、なんて感覚は、正直、ないんだよ」
そう言いながら、ふたりは巡を抱き締めた。
敬うような言葉ではなく、親のような優しげな表情、言葉、温かい手。
親なんて居ないけど。
けど、親がいたらこんな感じなのかな、とか。
「……ありがとう」
巡の方が、遥かに長く生きているけど。
その中でようやく見つけた温もりに、巡は少し泣いた。