それでも、あなたを愛してる。【終】


不特定多数の笑い声と、この場でどうすれば良いのか迷う人々、黙ったままの宗家の面々に、それを見下ろす四ノ宮当主の彩蝶。

冬の柊家が無い現在、宗家は三家。
春の橘家、夏の朱雀宮家、秋の桔梗家……それに連なる各三家の分家は基本、物を言わない。

宗家は三家、分家も各三家の、合わせて九家。
柊家は後継者が失踪したことが滅亡のきっかけだった為、分家も解体出来ぬまま、今日に至る。

そして、柊家滅亡の寸前、冬の筆頭分家だった氷室家は、滅亡している。
その関係で、何者でもなかった氷見家に、【分家】の称号が授けられた。

繰り上げ、と、呼ばれるそれは彼らを助長させ、氷室家と肩を並べていた椿家は脱退、それに伴い、もう一家繰り上げし、残り一家は物言わぬまま。

気づけば、冬の宗家のように振る舞う氷見家は危険分子として、四ノ宮家内部で『粛清』の声が上がり、対象となり始めていた。

(まあ、仮にも当主である私にこの態度じゃ、四ノ宮家の権威の為にも『粛清』だよな)

─でも、彩蝶はそれで満足しない。
そんなもの、手緩いからだ。
彼らの所業は事細かく、彩蝶の頭に入っている。
神々の力であることは勿論、そのほかの心優しい四季の家の面々に寄って集まったそれをいつ放出するか悩んでいる中、馬鹿なことをしてくれる彼らは、ユエに暴言を吐きながら、依月さんの存在を主張し、

「神と言うならば、受け取りたまえ!あなたの為に用意した!」

─彼女を、“生贄”だと声高らかに。しかし。


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