それでも、あなたを愛してる。【終】


育ててくれた最愛の両親や妹と離れ、渋々やってきた、四ノ宮家。

苦しいことも沢山で、遊んでばっかりじゃいられなくて、死ぬほど嫌なこともあるけど、なんでかな。

契たちと友人になれただけで、全部を無に帰せるくらいには、今はもう満ち足りた気持ちだ。

だから、恩返しとかも要らないのにね。

『分かった。─赦すよ』

彩蝶は笑った。
赦さない選択肢なんて、元々無かったけど。

彩蝶が産まれた時から、自然は祝福をくれた。
花を咲かせ、風を吹かせ、緑で包み、水を与え、外で遊んでいて、怪我したこともない。
それはずっと、守られていたから。

でも、ユエを見ればわかるでしょう?
本物の刻神様は、愛し子なんて興味ないの。
最愛の二の次なの。それどころか、最近やっと、半身として蘇ったの。
─じゃあ、誰が彩蝶を祝福していたかって?

それは多分、彩蝶の身に流れる四ノ宮家と、今の四ノ宮家になる前の源流─皇の家である司宮(シノミヤ)家の血が混ざり合い、そうなっただけの話。

だから、彩蝶はこの運命から逃れられなかった。
幼い頃、生まれてすぐから両親に愛されなかったことも、最愛の婚約者が殺されたことも、全部全部、彩蝶が受ける祝福が、別の形で神様に返されていただけだと思ってる。

だから、あまり人とは関わらないようにしていたんだけど、ここに帰ってきてから、わがままになった気がするや。

(契たちを見てると、愛っていいな〜って思うよ。結婚するつもりはないけど。彼以外、愛せるようになれないだろうから。約束を破りたくないから)

だから、2人が幸せになるために手を尽くすよ。
それが、彩蝶の当主としての意地だ。

「─良い、話せ。我も柊家の後継者の件に関しては気になっておった。四季の家に置いて、三つしか家がないのは寂しいからな」

彩蝶の言葉に、契が頭を下げると、困惑する氷見をはじめとする人々を冷ややかな目で見て、依月さんたちの元へ向かう。

『氷見をはじめとする膿を、出し切る』

そう言って見せられた、契が調べていた内容。
あの夜、氷室家に起こったこと。
その前にあった数々の話や、柊家の真相。

契がこの後どうするかは分からないけど……。

「……?」

様子を見守っていると、依月さんのそばに居る男性がこちらを見た。契に頷き、彩蝶の方へ。

心臓がざわめいた。
─待って、何?何が起こっているの。

「─手を、お借りしても?」

そう言って気まずそうに微笑む彼に、彩蝶は泣きそうになりながら、強く頷いた。

< 134 / 186 >

この作品をシェア

pagetop