それでも、あなたを愛してる。【終】
「どうしたの、華恋」
「どうしたもこうしたも、依月がそんな接客業なんてしたら、契さんがおかしくなるよ!」
「ええ?契が?」
「まっさか〜とか、信じられないって言ったら、怒るからね。あんた、本当に自分がどれだけ愛されているのか、ちゃんと理解してる!?」
「……」
(もう既に怒ってるじゃん……とかは、自分のために言わないでおこう)
依月の無言を受けて、華恋は大きなため息。
「あの時、お姉ちゃんとか何とか言ってたけど、やっぱり依月、あんたは生粋の妹だよ。今日だって、駅の改札で詰まってたし、自販機の使い方も知らないし、もうゲームセンターの存在も知らないでしょ。洋服とかもどこで買ってたの」
「えぇ……だって、電車は2回目だし、自販機は初めてだし、ゲームセンター……はよく分からないけど、洋服はいつも契が用意してたやつを……」
「……はぁぁぁぁぁ」
深くて、おっきいため息。
そんな変なことを言ったつもりは無いが、変なことを言ったのだろう。
「─ちょっと、絢人に電話してくる」
「絢人さんに?─行ってらっしゃい」
唐突に立ち上がった華恋を見て、複雑な立場のふたりが意外と仲良くて良かったな〜なんて、呑気なことを考えながら、依月は華恋を見送った。
─約30分後、退路を絶たれるとも知らずに。