それでも、あなたを愛してる。【終】
「だから─……!?」
─……どうすれば良いのか、分からないの。
分からないから、誰か教えて。
そんな声の出し方も、もう忘れた。
「……ごめんね」
ぎゅっ、と、横に来た華恋に抱き締められる。
ああ、そうだった。この間、私は契に。
「……契を、愛してるわ」
「うん」
「私が何を言っても、愛してるって……」
「うん」
「私、心から言いたくて、あの人を好きになったことを伝えたくて、だから、、でも、私が想う以上に、あの人は私をっ」
「……うん」
頭を撫でてくれる華恋。
その優しい手に撫でられ、自身の手の甲にぼとぼと落ちた雫が、依月自身に泣いていることを教えてくれる。
「怖いんだね、依月……」
「……っ」
そう、私はきっと怖いんだ。
愛されていることは理解している。
あの人がやった事すべて、驚いてもなお、やりそうだなぁって、心のどこかでは考えて。
「帰ってこなければよかったって、どっかで思ってる……そうすれば、契は幸せになれたかもしれない……っ、大変な時っ、契を、支えられる奥さんとか……、わ、私じゃなくて……」
愛だけで生きていく方法を、どうか教えて。
─契は、依月の全てだった。
契に任せていたら、何もかも決めてくれた。
依月が決めることが出来ないから、全部全部、契がしてくれた。
多分、今、想いのままに結婚しても、契は笑って言うだろう。
『依月は何も心配しないで。愛しているよ』
そう言って、頬を撫でて笑ってくれる。
ずっとずっと、ずっとそうだった。
それが正しいと思い込んでいた私は、この数年間で酷く裏切られて、自分がずっと許せない。
愛されている自覚を持っても、
この人が行った裏のことを全て知っても、
それを抱き締めたいと願っても、
愛おしい人と感じても、
この人の隣に立つには、自分は不相応な気がして。