それでも、あなたを愛してる。【終】
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「─良かったのか」

依月が契さんに連れていかれて、割とすぐ。
入れ替わるようにやってきた柊絢人は、華恋の姿を認めると、そう聞いてきた。

「あら。なにか良くないことでもあるの?」

「いや……依月さんの様子が」

「それなら大丈夫よ。契さんが上手くやるから」

「そうなのか?」

「ええ。─依月は今、あのクズどもの長年の虐待や洗脳、元々の契約の弊害で、精神がめちゃくちゃに乱されてしまってるの。だから、上手くコントロールし続けることも、神力顕現も行えない。元々、向いていないとかもあるだろうけど……うん、大丈夫だと思うわ。でも、契さんは暫く連絡取れなくなるだろうから、そこは上手く立ち回らないとね」

「取れなくなるのか」

「……」

「何故?」

─さっきから、何でも素直に聞いてくるこいつは本当に成人している小説家なのだろうか。

予め手に入れた情報通りに思い返す感じ、めちゃくちゃ頭が良いはずなんだけど。

「ねぇ、絢人。あなた、恋愛経験は?」

「ないけど。必要が?」

「小説家なら、ある程度の男女の仲は知っておくべきじゃないの?」

「そこら辺は予測で書いてる。褒められてるよ」

「嘘でしょ?やっば……」

─なんて、適当な雑談を交わす。

「やっぱ、身内がアレだと大変よね」

ふと、華恋が愚痴を零すと。

「すごくわかる。特に、父親が厄介」

「あいつらって、何であんなに恥知らずなんだろうね。いや、まあ、父親だけだと主語が大きすぎるから、私達の父親は、って言っておく」

「ハハッ、まぁ、本当に恥というものを知らないよね」

絢人と気が合うのは、明らかにここだ。
自分の父親を心の底から嫌悪し、憎んでる。

「こんなにも落ち着ける時間、これまでの人生で初めてかも」

「同意」

2人揃って、笑い合う。
願わくば、こういう平穏が永遠に続けば良い。

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