それでも、あなたを愛してる。【終】



『─失礼します』

とりあえずの方針が決まったところで、落ち込む千景と凛を励ましていると、外から声がかかる。

「入りなさい」

冬仁郎さんの言葉で、襖が開き、現れたのは綺麗な着物を着た幼い女の子だった。

「失礼します」

「よく来たね、夜蝶(ヤチヨ)。彩蝶(アゲハ)は?」

「姉様はやりたいことがあるから、と、ここに来るのを躊躇っておりましたが、寸前で“管理者”様が現れまして、捕まっておりました」

「そう」

淡々とした物言いをしながら、首を傾げる女の子は契たちを見ると、正座のまま、深く頭を下げた。

「お初にお目にかかります。この土地にて、【刻神様】を祀る神社にお仕えしております、雪城家第二子、雪城夜蝶と申します」

「これは御丁寧に。俺たちは......」

「勿論、存じ上げております。朱雀宮様、橘様、桔梗様。このような田舎にまで、御足労をお掛けしました」

その所作は美しく、猫目の彼女は大きな瞳を伏せながら、

「第一子であり、姉の彩蝶は皆様にお会いしたくないと言い、逃げようとしたところで、“管理者”に捕まっておりました。それもこれも、“未来”のせいですが……」

「夜蝶」

「─失礼致しました」

年頃は、まだ10代前半くらい。
美しい所作をしているが、まだどこか初々しく、百合さんの声で失言したと言わんばかりに、顔を曇らせる。

四季の家の上に立つということは、こういう子供を多く生み出し、見せつけられるということ。
仕方が無いと言われればそれまでだが、こうやって本来ならば考えなくてよいことで、子どもが自責する姿は応えるものがある。

『契が当主様になったときは、千景も凛も当主様で、三人は仲良いからきっと、素敵な未来を描けるよ。私も隣にいるから。ね』

─依月、お前が帰ってきた時、俺は何かを変えることが出来ているだろうか。

いいや、変えたい。変えておきたい。
早く、もっとやりたかったことがあと少しで、出来るようになる。その権限を得られるのだから。


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