それでも、あなたを愛してる。【終】
「始祖……」
「やだな〜そんな呼び方はやめてよ。凛。ユエでいいよ。今の僕は一応、人間として存在してるつもりだし。─あのね、凛。あの時、愛する人を想って泣く君の声を聞いて、僕は“僕”を取り戻したんだよ」
「……」
「君が心のどこかで悔やんでいるあの過去は、少なくとも、多くの人を救うきっかけになる。だから、もう夢に見てまで、苦しまなくていいんだよ」
「……っ」
「よしよぉし、頑張ったねぇ」
その身には大きすぎた業。
凛がこの先で、何を見たかは知らないけど。
「千景も、これから何があっても大丈夫だからね。何があっても、何回繰り返しても、僕が人間として死ぬ前に、全部整えるからね」
ユエはそう言って、千景にも笑いかける。
それはある意味、予言のような。
この立場に産まれたからには、波乱万丈な人生は避けられないと、理解はしているけれど。
「と、いうことで、まずは契だね」
凛たちから離れて、そばに来たユエ。
彼はニッコリと笑うと、契の胸元を拳で殴った。
「─取り返すよ、君の最愛」
「… どうして…」
痛くはなかった。痛くはなかったんだ。
契の口から漏れた疑問に、彼は首を傾げて。
「僕はアマネがいないと生きていけなかったよ」
「……っ」
君もそうでしょ?、と、視線で問い掛けるような。
『契』
─お前のいない世界で、やれることをしたい。
お前の帰りをずっと待っていたい。
覚悟は決めたはずだったのに。
「……ありがとう、ございます」
例え、意思が弱いと罵られたとしても、全てを困難を超越するような存在を前に、契は縋る道を選ぶ。
「うん」
例えどんなに覚悟を決めたとしても。
─君のいない世界はやっぱり、モノクロだ。