それでも、あなたを愛してる。【終】
「─美言たちは元気?」
呼び出しておきながら、尋ねても答えない刹那に問えば、彼は笑った。
「勿論。家族仲良く、幸せに暮らしているよ。会いに来れないけど、君を見守ってる」
「そっか〜あ、じゃあ、刹那に言って、どこかの空間に繋いでもらえれば、贈り物とか出来るのかな」
「君からはね。美言たちからの分は時間かかるけど、俺が持ってくる方法なら」
「本当?じゃあ、美幸くんに何か贈り物しようかな。フフッ、楽しそう。御手紙も書くね」
「うん。そうしてあげて。きっと、喜ぶから」
─悠月は、刹那に拾われた。
刹那の空間で、美言達と生活して、色んなことを教えて貰って、永遠にそこで生きるのだと思っていたある日、刹那に連れられた夜の街で、置いていかれた。
『どうして』って思っては、救ってくれた人達を詰ったものだけど、何だかんだで今があるのだから、やっぱり、刹那の『運命の調律者』という肩書きは偽りなんかじゃないのだろう。
『運命の調律者』らしく、人ならざるものらしく、人の感情を上手く理解できないと、話した刹那。
そんな刹那が悠月を呼び出すほど、思い悩んでいる訳は。
「刹那」
「?」
「刹那はさ、少しは人の気持ち、理解出来るようになった?」
「……」
刹那は目を見開いた。
再会した時、『どうして』『なんで』と責めた私に、刹那は『間違えたんだ』と呟いた。
そして、『分からないんだ』『どうすれば正解なのか』『それを認めると、昔の自分の存在を、いた家族の存在を否定してしまいそうで怖い』と。
─そう言って、彼は顔を覆った。
「…………どうだろうね」
その表情は悲しげで、悠月はパフェを食べる手を止める。
「わからない?」
「……わからないよ。だって、人間をやめさせられたの、かなり前だし」
「“普通に生きていたら”今、刹那は何歳なの?」
「んー、彩蝶よりも6歳上だから、25歳かな」
「そっか。ちなみにさ、その身体になった今、もう年齢とか関係ない?」
「正直ね。人間としての戸籍が残っているわけでもないし、もう俺の意識の問題」
「そっか」
「うん。……でも、あの夜、何も言わずに君をあんな危険な場所に置き去りにしたことは間違っていたと、今ではわかるよ」
全てを知っている、人よりも超越した存在だからこそ、人の世界に蔓延る危険性やそれに伴う恐怖を理解できなかった刹那。
「ごめんね、悠月」
─悠月は、刹那の過去を詳しくは知らない。
知っていることといえば、元々は人間で、家族を殺されてしまったことくらい。
「良いよ。赦してあげる、っていうと、ちょっと話が変わるというか、上からだし、私はそこまで考えていないし、怒ってなんていないんだけど」
驚いた。怖かった。寂しかった。
感情としては、だいたいそんな感じだったから。