君の隣が、いちばん遠い


「うーん……」


雑貨店の棚の前で、何度も腕を組み、棚と手元とを交互に見比べる。

彼のことを思い浮かべながらプレゼントを選ぶのは、想像以上に難しい。


文房具、マフラー、手袋、小さなオブジェ、革小物……たくさんの候補がある。

その中で、これだと思えるものに出会えず、足を止めたまま時だけが過ぎていく。


自然と、一年前のことを思い出していた。


クリスマスのあの日。

一ノ瀬くんに告白されて、わたしも勇気を出して一ノ瀬くんに想いを伝えた。

手を握って、あのイルミネーションの下で、ふたりの関係が変わった。


春にはお弁当を一緒に食べて、夏には海へ出かけて、秋には修学旅行で手をつないだ。

彼と過ごした日々が、わたしの一年をやさしく彩ってくれた。


わたしにとって彼は、ただの恋人ではない。


怖がりだったわたしの背中を、静かに押してくれる存在。

支えであり、憧れであり、大切な「となり」の人。

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