君の隣が、いちばん遠い
「……夏休み、もうすぐだね」
「うん。早いな」
「なんか、今年は長く感じたのに、ここまで来るのが早かった」
「わかる。俺もそう思う」
川の流れの音。遠くで鳴る犬の声。
道端には、小さなひまわりが咲いていた。
わたしは立ち止まり、少し迷うように口を開く。
「……また、明日も来る?」
それは、わたしにとって小さな冒険だった。
でも、一ノ瀬くんはすぐに笑ってうなずいた。
「うん。来るよ」
その返事に、心がふっとほどけた。
会話はそれだけ。
でも、今のわたしたちには、それで十分だった。
沈黙が、あたたかい。
風が、やわらかい。
“誰かと一緒にいること”が、こんなにも自然だと思えたのは、初めてだった。
ふたつの影が、川べりの道に長く伸びている。
その並んだ影を、わたしはそっと見つめながら歩いていた。