【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
院内の廊下を、雪乃は早歩きで追いかける。
そのすぐ前を、大雅が歩きながら、PHSを首にかけ、
白衣の袖に腕を通していく。

「ちょ、ちょっと待ってってば……!」

「ほら、外来遅れるよ。足が止まってる」

「言ってるそばから白衣着ながら歩かないでよ! 医者感すごすぎ!」

「医者だもん」

「それはそうだけどっ!」

大雅は角を曲がると、滝川の外来診察室の前でぴたりと足を止める。
そして診察室のドアを軽くノックし、扉を開けた。

「おはようございます。雪乃さん、診察お願いします」

「はーい、入って入って~」
滝川の明るい声が中から響く。

「じゃあ、お願いします」

そう言って雪乃の背中を軽く押すと、大雅はそのまま踵を返して去ろうとした。

「あっ……ちょ、付き添うって言ったじゃん!」

「外来あるんだよ。頑張って」

手をひらひらさせながら去っていく大雅に、雪乃は口を尖らせたまま診察室に入る。

「……もう、あれは付き添いって言わない……」

ぼそりと呟いたその声を、デスクに座っていた滝川が聞き逃すはずもなかった。

「ん? なんだなんだ? 期待してたの? 手をつないでベッドサイドまで付き添ってほしかった?」

「ち、違いますっ!」

顔を赤らめてぷいと横を向く雪乃に、滝川は楽しそうに笑った。

「いやーでもさ。付き添うって言っても、神崎先生、朝から患者さん抱えてるしな?
それでもここまで来たってことは、まあまあ――甘いよねぇ?」

「……わかってますっ」

「うんうん。ちゃんと分かってる雪乃ちゃんは偉い」

そんなやりとりの中、滝川の手際は的確で、問診も心音チェックも無駄がない。
茶化しながらもプロの視線はぶれず、だからこそ雪乃も、不思議と安心して診察を受けられるのだった。
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