【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
診察室の中、聴診器をあてながら、滝川が軽やかな口調で尋ねた。

「最近、調子はどう?」

「はい。だいぶ体力も戻ってきて……」

雪乃は、少し照れくさそうに笑う。

「大雅先生、時間あるときは一緒に散歩してくれるから。最初はすぐ疲れてたんですけど、だんだん距離も伸びてきて……。この前なんか、寝坊してちょっと早歩きまでできました」

「……ああ、それでさっきバタバタしてたわけね?」

くすりと笑いながら、滝川はカルテにペンを走らせる。

「そっか。早歩きできるくらいってのはいいね。心肺機能も筋力も、ちゃんと回復してきてる証拠だよ。術後3ヶ月でここまで戻ってるなら、順調、順調」

聴診器を外し、トントンと膝のあたりを軽く叩く。

「ただ――寝坊で走るのは計画に入ってないからね? “お姫様”が慌てて駆ける姿、想像しちゃったよ」

「や、やめてくださいっ……!」

頬を染めてうつむく雪乃に、滝川は茶目っ気たっぷりに笑いながら、やさしく言葉を重ねた。

「でもまあ、今のあなたがそうやって笑ってるのを見るのが、いちばん嬉しいよ。ちゃんと前向いてるし、自分の身体とも、周りの人とも、うまく歩けてる」

「……ありがとうございます」

「感謝するなら、付き添いまでしてくれた“王子様”にしなさいな」

「それ、本人に言ったら絶対に調子に乗ります……」

「じゃあ、調子に乗せてあげな。たまには」

ぽつりと洩れた滝川のその言葉は、冗談のようでいて、どこか温かくて――
雪乃は思わず、ふっと口元を緩めた。
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