【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
翌朝――。

カーテン越しのやわらかな朝日が、ふたりの眠る寝室にそっと差し込んでいた。

雪乃は、大雅の胸にぴったりとくっついて寝ていた。呼吸のリズムが心地よくて、目を開けたくない。
だけど、ほんの少しだけ、意識が浮かんだ。

「……ん」

小さく唸るように声をもらすと、大雅がすぐに反応した。

「起きた?」

「……まだ半分寝てる」

「ふふ、かわいすぎ」

囁くような声が頭の上に落ちてくる。
雪乃は眉をひそめて顔を埋め直した。

「ねえ……今日も休みにしない?」

「ダメです。俺は仕事、姫様は心リハ。お寝坊さんには厳しくいくって昨日宣言したからね」

「うぅ……昨日のわたし、なんでそんなこと言っちゃったの……」

雪乃が小さく嘆いていると、大雅はくすくす笑いながら、彼女の頭を優しく撫でた。

「じゃあ、その罰として、起きるまでキス攻撃ね」

「や、やめ――っ」

逃げようとするけど、逃がしてくれない。
布団の中でもぞもぞとふたりで笑い合いながら、ぐずぐずと甘い朝が過ぎていく。

やがて、ようやく着替えを始めるころには、雪乃も少しずつ覚醒してきていた。

「……ほんとに今日も行くの?」

「行くよ。俺は君の健康とリズムの味方ですから」

「わかったよ……姫様は頑張る……」

「それでこそ」

そして数十分後、歯を磨き終えたふたりはいつも通りの玄関に立っていた。

手を伸ばして靴を履こうとする雪乃に、大雅がふとひと言。

「今日の夜ごはん、何かリクエストある?」

「……帰ったらチーズケーキの残り食べたい」

「それ、夕飯じゃないから」

「じゃあ……夕飯も作るけど、その後ね。絶対」

大雅はふっと笑って、雪乃の頭にぽんと手を置いた。

「はいはい、姫様のご命令どおりに」

ふたりの笑い声が、さわやかな朝の空気の中に溶けていった。
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