【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
リハビリ室のトレッドミルの上、雪乃は汗をにじませながらも必死にペースを維持していた。
心拍数は高いが、彼女の表情には負けまいという強い意志が光っている。

「もう少し! あと5分だよ、雪乃さん!」と理学療法士の小泉さんが声をかける。

雪乃はフラフラしながらも、小さく頷いて歩き続ける。

隣のリハビリルームでは、滝川先生がカルテを手に談笑している。

そんな中、大雅が現れ、汗ばんだ雪乃の肩を軽く抱いて励ます。

「よく頑張ってるな。無理は禁物だけど、今日は調子良さそうだ」

雪乃はふうっと息をつきながらも、その言葉にほっと笑みを返す。

しかし、小泉さんはその甘い空気にややムッとしている。

リハビリ後の休憩時間、雪乃と大雅が並んで水分補給しながら軽く触れ合う様子を見て、小泉さんは思わず滝川先生に八つ当たり気味に声をあげた。

「滝川先生! あの二人、まるでラブラブの王子様とお姫様ですよ! これじゃ私の厳しいリハビリ指導が全部チャラにされちゃいますよ!」

滝川先生は笑いながら肩をすくめる。

「そうか? あいつらのラブラブパワーは患者さんの回復にもいい影響だと思うけどな。小泉さんも少し見習ったらどうだ?」

「ええー! 私はプロですから、甘やかしませんよ! でも……ちょっと羨ましいかも」

雪乃はそのやりとりをこっそり聞きながら、顔を赤らめて笑った。

大雅は優しく雪乃の手を握りしめ、

「リハビリはキツいけど、俺がそばにいるから大丈夫。さあ、もうひと踏ん張りだ」

雪乃も力強く頷いた。

「はい、王子様!」

小泉さんは苦笑しつつも、そんなふたりを見守りながら、

「まあ……こういう力も時には必要かもしれないな」

と小声で呟いた。
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