【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
雪乃がソファで読書をしていると、玄関のインターホンが鳴った。 

「はーい……あれ、宅配便?」

サインをして受け取った大きな段ボール箱には、見覚えのない差出人名と、大雅の名前。

「……なんか届いたけど……?」

ちょうどそのとき、リビングから顔をのぞかせた大雅が、いたずらっぽく笑った。

「あー、それ、俺がネットで頼んだやつ。開けてみて」

「え、なにこれ……重い……!」

雪乃が段ボールを開けると、中から出てきたのは、白とゴールドを基調にしたシックなクリスマスツリーのセット。

「……えっ……もしかして……」

「うん。ツリー。飾ったことないって言ってたよな? だったら今年は、ふたりでやろうと思って」

「……うそ、ちょっと、もう……!」

雪乃の目がぱっと驚きに見開かれ、でもすぐに、嬉しそうに細められる。

「こんなの、ちゃんと飾るの初めてかも……!」

「じゃあ、いっしょにやろう」

そう言って、大雅が箱からツリーの枝を取り出す。説明書を読みながら土台を組み立てていく姿は、どこか頼もしくて、それでいてちょっと不器用で。

「枝の向き、逆になってるよ」

「……知ってる。今、試してただけ」

「ふふ、はいはい、“試してた”ね。やり直そっか」

枝を広げて飾りを付けていくうちに、ふたりの間には笑い声がぽつぽつとこぼれた。

金のリボン、雪の結晶のオーナメント、小さなガラスのボール。

「この星、てっぺんに付けたいけど……うーん、届かない……!」

「はい、お姫様、どうぞ」

「うわ、ちょっと、持ち上げないで!」

「落ちるなよ?」

「落とさないでよ!」

少し騒がしくて、でもあたたかくて。

最後にライトを点けると、ふたりの作ったツリーが、やわらかく輝き始めた。

「……きれい」

「うん。思ったより、いい感じだな」

「……ねぇ、大雅」

「ん?」

「ありがとう。こういうの、夢みたいだったから……」

「夢なら、毎年叶えよう。俺といっしょに」

そう言って、大雅が雪乃の頭をぽんと撫でる。

ツリーの光に照らされたふたりの影が、静かに寄り添っていた。
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