【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます

甘くてあたたかい、はじめてのクリスマス

12月24日、クリスマスイブ。

外は冷たい風が吹いていたけれど、部屋の中はツリーの光とオーブンのぬくもりでぽかぽかしていた。

ダイニングテーブルには、大雅が数日前に注文していた「クリスマスディナーセット」が届いていて、雪乃はそれを丁寧に盛りつけ中。

「ローストチキンに、ラザニア、バーニャカウダ……あと、スープもあった。わ、盛りつけるだけでちょっとしたレストランみたい」

「うん。俺が作ったわけじゃないけど、うまそう」

大雅はワイングラスにノンアルコールのスパークリングジュースを注ぎながら、雪乃の働きぶりをにこにこと見守っていた。

「飾りつけもちゃんとしたし、ツリーの下にはプレゼントもあるし……あとは、乾杯するだけ?」

「おう。じゃ、メリークリスマス」

「メリークリスマス!」

ふたりでグラスを軽く合わせると、小さな音が響いて、ふたりだけの祝福のようだった。

ひと口ずつ味を確かめながら、笑い合う。

「このバーニャカウダのソース、めちゃくちゃおいしい……!」

「でしょ? 一応、口コミ見て選んだから。ハズさなくてよかった」

「……やっぱり、大雅と過ごすと“初めて”が楽しい」

「なにそれ、惚気?」

「うん。クリスマスだし、いいでしょ?」

「うん。許す。今日は特別だからな」

「“今日だけ”って言って、いつも甘やかしてるけどね?」

「バレてたか」

ローストチキンを手でほぐしてあげたり、グラタンをふーふー冷まして食べさせたり、ふたりの時間は甘く、そしてどこか家庭的で心地よかった。

食後には、昨日焼いておいたチーズケーキを切り分けて。

「……来年も、こうやってふたりでごはん食べてるのかな」

「いや、来年はもっと豪華にしようか。俺が料理教室通ってさ」

「えっ、通うの?」

「……冗談だよ。たぶん」

「ふふ、でもちょっと見てみたいかも。エプロンつけてフライパン振ってる大雅先生」

「じゃあ、お姫様はそばで応援よろしくな」

「うん」

そう言って、雪乃はちょっとだけ顔を赤らめながら、大雅の手にそっと自分の手を重ねた。

窓の外では、静かに雪が降り始めていた。

この夜の記憶が、ふたりにとってずっと温かいものでありますようにと、願いを込めたような、そんな穏やかな聖夜だった。
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