【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
春の朝。
ほんのりとした陽ざしが、雪乃の頬をなでるようにやさしく差し込んでいた。
「おはようございます」
馴染みの暖簾をくぐって、「きくの」の厨房に顔を出すと、奥からおばあちゃん────
さえ子さんが顔を出してくる。
「あら、雪乃ちゃん。今日もかわいいねぇ、春風に似合ってるわ」
「もう、さえ子さんったら。お世辞でもうれしいですけど」
ふふっと笑いながら、雪乃はエプロンに袖を通す。
さえ子の言葉には、いつもどこか母のようなあたたかさがある。
「そうそう、ちょっと聞いてくれる?」
手を動かしながら、さえ子がぽつりとこぼすように言った。
「この前ね、うちの健一——不動産の仕事してるあの子よ。社員さんが一人急に辞めちゃって、事務の仕事で困ってるって話しててね」
「えっ、大変ですね……」
「それでね、誰かいい人いないかなって言うもんだから、あたし、ピンときたのよ。……雪乃ちゃん、正社員の仕事も探してるって言ってたでしょ?」
思わぬ言葉に、雪乃は一瞬まばたきをする。
「え、わたし……ですか?」
「うん。気心知れてるし、何よりきちんとしてるもの。健一にも一度会ってみない? お茶でもしながら、話だけでも聞いてみるといいわ」
「……わ、わかりました。なんだか、急に緊張しますけど」
「大丈夫よ、雪乃ちゃんなら。春はね、新しいことを始めるのに、ちょうどいい季節なのよ」
咲き始めた桜の枝が、裏庭の窓からちらりと見えた。
日常の中に、そっと差し込む未来のきざし。
そんな春の日の始まりだった。
ほんのりとした陽ざしが、雪乃の頬をなでるようにやさしく差し込んでいた。
「おはようございます」
馴染みの暖簾をくぐって、「きくの」の厨房に顔を出すと、奥からおばあちゃん────
さえ子さんが顔を出してくる。
「あら、雪乃ちゃん。今日もかわいいねぇ、春風に似合ってるわ」
「もう、さえ子さんったら。お世辞でもうれしいですけど」
ふふっと笑いながら、雪乃はエプロンに袖を通す。
さえ子の言葉には、いつもどこか母のようなあたたかさがある。
「そうそう、ちょっと聞いてくれる?」
手を動かしながら、さえ子がぽつりとこぼすように言った。
「この前ね、うちの健一——不動産の仕事してるあの子よ。社員さんが一人急に辞めちゃって、事務の仕事で困ってるって話しててね」
「えっ、大変ですね……」
「それでね、誰かいい人いないかなって言うもんだから、あたし、ピンときたのよ。……雪乃ちゃん、正社員の仕事も探してるって言ってたでしょ?」
思わぬ言葉に、雪乃は一瞬まばたきをする。
「え、わたし……ですか?」
「うん。気心知れてるし、何よりきちんとしてるもの。健一にも一度会ってみない? お茶でもしながら、話だけでも聞いてみるといいわ」
「……わ、わかりました。なんだか、急に緊張しますけど」
「大丈夫よ、雪乃ちゃんなら。春はね、新しいことを始めるのに、ちょうどいい季節なのよ」
咲き始めた桜の枝が、裏庭の窓からちらりと見えた。
日常の中に、そっと差し込む未来のきざし。
そんな春の日の始まりだった。