氷壁エリートの夜の顔
「本当は、もう少し時給を上げてあげたいんだけど……ごめんね」

 私は慌てて首を振る。

「とんでもないです。おいしい賄いもいただいてるし、何より、こうして働かせてもらえてるだけでありがたいんです。私がひとり暮らしで何とかやっていけてるのは、古美多のおかげなんですよ」

 京花さんはふっと笑い、それから少しだけ心配そうに尋ねる。

「弟さんと妹さん、これからの学費、大丈夫そう?」

 私は頷いた。

「はい。まだふたりとも高校生なんですけど……妹はスポーツ推薦を狙うみたいです。弟は成績も悪くないので、狭き門だけど、給付型の奨学金を目指すって言ってました。母も頑張ってくれているので、せめて学生の間くらいは、仕送りで支えられたらなって思ってます」

 京花さんは優しく笑って、私の肩をぽんぽんと軽く叩いた。
 たったそれだけのことで、私の心は、不思議なくらい軽くなった。
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