ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

Ⅲ.星の祭り

「ようこそ、“祭り”へ」

ドゥーベが言った。いつものように、微笑んでいた。

ルカは既に全て取り戻した。記憶も、感情も、自我も。
だがその代償に、彼らの狂気はもう止まらなかった。

 

六人の青年たちは、ひとりの少女のために「世界を演じて」いた。
この“祭り”は、彼らにとって最後の儀式――ルカを「もう一度、自分たちだけのもの」にするための再演だった。

 

「君が“自分”を取り戻したのは嬉しいよ。でも、それは間違いだったんだ」

ドゥーベはそう囁いて、ルカの首に細い糸を巻きつけた。

ミザールは虚ろなまなざしで、彼女の足に“音”を封じる枷をはめる。

フェクダは黙って、手帳を広げた。そこには、「ルカが壊れる順番」が記されていた。

 

「ねぇ、聞いて」

アリオトの囁きは、甘く毒に満ちていた。

「僕たちさ……神様になったんだよ。君の中で。ずっと祈ってた。ずっと見てた。君が笑うと、世界が輝いて、君が泣くと、世界が砕けた」

「だから、君はもう“ひとり”じゃないんだ。君の自由なんて、君ひとりのものじゃない。――わかるよね?」

 

メラクは笑っていた。涙を流しながら。

「結局、俺たち全員、ずっとずっと、お前のことが好きで、でも……お前は、誰も選ばなかった」
「だったら、お前を“選ばせない”ことにした。全員で、お前を壊して、形を奪って、名前を喰って、お前を“物”にするって決めた」
「――全部、祝福だよ? お前のための、最後の祭りなんだよ」
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