ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー
その瞬間、空が割れた。

天から降るのは光ではない。
星々が砕け、熱と狂気を孕んだ音が空間を蝕む。

ルカの瞳に映るのは、己を神と勘違いした六つの影。

彼らは、誰より彼女を愛しながら――“少女”を堕とすために生まれた、かつて地上へ堕とされた星だった。

 

「どうして……どうして、こんなことに」

ルカが震える声で呟くと、ミザールが静かに答える。

「だって、君が“星”に戻ろうとしたから。君が“自由”になろうとしたから」

 

そのとき、ルカの指先が光る。

六つの星から奪い返した“記憶の欠片”。

それは、まだ失われていない、彼女自身の“心”だった。

 

「私はもう、壊されない。私は、“あなたたちのもの”じゃない」

 

六つの影が、同時に表情を歪めた。

メグレズが泣き、フェクダが手帳を破り、メラクが叫び、アリオトが嗚咽し、ドゥーベが微笑んだまま血を吐き、ミザールが最後に言った。

「なら、殺すしかないね」

 

“星の祭り”が始まる。

それはただの戦いではない。
彼らが築き上げた虚構の世界を、ルカが自らの意思で壊し、焼き、踏みにじるための――反逆の祭り。

 

涙を、流してはいけない。
誰も、助けには来ない。

ここは、“少女”が“神”に勝たねばならぬ、ただ一度の舞台。

 

六つの星が落ちていく。
その中心に立つ少女は、祈らない。
ただ、自分の“生”を叫ぶために剣を構えた。

 

「終わりにしましょう」

祝福を断ち切る、最後の祝詞として――
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