ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

I. 匣庭

そこは、星の眠る匣庭だった。

空はガラスのように透き通り、巨大なドームが街を覆っていた。朝は来ない。風は吹かない。夜だけが、永遠に続いている。

街の灯りは、宙に浮かぶ小さな星々だけ。どれも本物の星に似ていて、手を伸ばせば触れられそうに瞬いていた。

ルカは、ある夜、そこで目を覚ました。

冷たい石畳の上、見知らぬ街。本当の名前も、年齢も、なぜここにいるのかも思い出せなかった。ただ胸の奥に、焼けるような焦りと孤独だけがあった。

「君は、星だったんだよ」

最初に声をかけてきたのは、アリオトという青年だった。金の瞳に夢を灯し、細い指でそっとルカの手を取る。

「君は、僕の光なんだ。ほかの誰にも触れさせない。ずっと、ここにいよう。ふたりだけでいい」

そう言って、アリオトはルカを屋根裏の部屋に連れていった。窓は釘で打ちつけられていた。扉には鍵がかかっていた。

朝も夜も、彼がルカのすべてを管理した。服も、食事も、体温さえも。

「君は外に出る必要なんてない。君には僕だけいればいいんだよ」

微笑みながら、彼は“やさしく”監禁した。
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