ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

Prolog

昔々、星に恋をした青年たちがいました。

空の彼方で瞬く、美しく遠い星。触れることも、名前を呼ぶことすらもかなわない存在に、彼らは恋をしたのです。

けれど、地上に生きる彼らには、星と共に生きることは叶いませんでした。

住む世界が、あまりにも違いすぎたのです。

だから、彼らは思いました。

「ならば、星を地上に閉じ込めてしまえばいい」と。

星を箱に詰めて、鍵をかけて、誰にも見えない場所に隠してしまえば、自分たちだけのものになる――それが愛だと、彼らは信じました。

それはきっと、ロマンティックな物語だったのでしょう。

美しく、切なく、運命に抗う恋のかたち。

でも、それは本当に「愛」だったのでしょうか?

それは、星の自由を奪うことではなかったでしょうか。

それは、ただの独占であり、呪いではなかったのでしょうか。

けれど物語は、そうして始まってしまったのです。

星は閉じ込められ、世界は止まり、恋は永遠の夜に囚われた。

そう、これは――

恋と呪いの、終着点。
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