ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー


次に訪れたのは、ドゥーベという青年だった。

「ルカ、君は星だった」

彼はそう告げると、ルカの頬に触れ、恍惚とした目で言った。

「大丈夫。何も考えなくていいよ。僕だけ見てて」
「ごはんも、お風呂も、ぜんぶ僕がやるから。だから……何も考えないで。誰にも心を渡さないで」

彼は優しかった。言葉も仕草も完璧で、安心をくれる人だった。

けれど、ルカがふと他の人に視線を向けたとき、彼の目が歪んだことに気づいてしまった。笑顔の裏に隠された何かを。



メラクはいつも怒っていた。

誰かがルカに近づけば、すぐに物を壊した。壁を殴り、鏡を砕き、声を荒らげた。

「なんで見てたんだよ、そいつのこと!なんで笑った!お前は俺のもんだろ!」

そして、泣いた。一人になると、しゃがみ込んで子どものように。

「……ごめん。ごめんってば。俺、怖くて……お前がいなくなるの、怖くてさ……」
< 4 / 30 >

この作品をシェア

pagetop