サルビアの育てかた
 ──父と喧嘩してしまったことを話すと、ライクさんはガストロパブへ連れて行ってくれた。少し高級でお洒落なレストランに連れていきたいと言われたけれど、それはさすがに遠慮した。

 パブに着くと、ライクさんは好きなものを食べていいと言って優しくしてくれる。空腹が限界を越えていた私は、お言葉に甘えてトマトのペンネやスモークサーモンなど、たくさんオーダーした。

 テーブルに並べられた料理を前にして、すぐさま食事を始める。トマトの酸味やサーモンの旨味が舌を楽しませてくれたおかげで、なんとか気力だけは取り戻せた。

 でも、どうしてなのかな……美味しいはずなのに空腹が満たされていくにつれて、虚しくなってしまった。

 お母さんの手料理が食べたい。
 心の底からそう思った。

 どんなお店の美味しい食事でも、母の手料理には勝てない。
 店内の照明が料理を一層美味しそうに引き立て、他のお客さんたちはみんなわいわい楽しそう。ライクさんもずっと気を遣ってくれている。それなのに、私の心にぽっかりと空いた穴は広がっていくばかり。
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