サルビアの育てかた
「レイ」

 ぼんやりしていると、心配そうな声でライクさんが顔を覗き込んでくる。

「どうした、旨くなかったか?」
「あっ、いえ。とても美味しかったです。ご馳走さまでした」

 無理に笑ってみせるが、ライクさんは私を見つめたまま首を傾げる。

「元気ないなんて、らしくねぇぜ」
「すみません」
「謝ることじゃねえけど。親父さんと喧嘩したこと、引きずっているんだろ?」
「……いえ。そういうわけでは」

 違う。実際はそうなんだよ。
 だけどみんなからの連絡を無視して、父に酷いことを言ってしまった手前、帰りづらいっていうのも本音だった。

 目線を落とし、暗い声で答えるしかない。

「父に合わせる顔がなくて。……帰りたくないんです」

 これは私の本心でもあり、ウソでもあった。

 ライクさんに「ちゃんと謝れば大丈夫」「素直になろう」「家に帰った方がいい」そう言われるのを期待していた。ただ、背中を押してもらいたかっただけなの。
 だけど、ライクさんの口から出た言葉は私が期待していた答えとは真逆のものだった。今までに聞いたことのないほどの優しい声でこう言われた。

「だったら……おれがずっと一緒にいてやるよ」
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