サルビアの育てかた
 そのとき、父と母は外出中だった。だから俺は、当時近所に住んでいた叔父に連絡をして助けを求めたんだ。

 叔父はジェイクといって、いつも俺たちによくしてくれる。母のセナと昔から仲がいいらしく、何かあれば助け合っていた。

 もちろん、その日も例外ではない。叔父のジェイクはすぐさま仔猫用のミルクを買って家に来てくれた。
 だけど仔猫は、ミルクさえも飲もうとしない。

『ねこちゃん、いらないの? おなかすいてないの? おねがい。ひとくちでいいから、ミルクをのんで』

 レイは仔猫から片時も離れることなく、献身的に世話をしていた。

 叔父が車を出して動物病院へ連れていってくれたが、獣医は今夜が山だと宣告した。点滴をし、注射も打ったが気休めのようなものだという。

『ねこちゃん、げんきになる?』

 レイは獣医の話を理解していなかったのか、それともまだ希望を捨てきれなかったのか。そんなことを訊いてくるんだ。

『この猫は……』

 助からない。
 そんなこと、いくらなんでも俺だって言えなかった。あのときの俺は、六歳児のレイにどう説明してやればいいかなんて頭が回るはずもなかった。
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