サルビアの育てかた
 すると隣で叔父がレイの頭を撫でながら、こんな話をしたんだ。

『この子は、天国へ行く準備をしているんだな』
『てんごく? それはどこにあるの?』
『うーん。たぶん、空の向こうにあるんだよ。あったかくて、美味しいものがたくさんあって、愉快な仲間がたくさんいる楽しいところだ。末永く幸せに暮らせる場所だよ』
『ねこちゃんは、そこにいきたいの?』
『……そうだな』
『でも、どうしてこんなにかなしそうなの?』
『ちょっとだけ怪我をして、病気になったからだな。天国へ行けば、痛いのも全部なくなるんだよ。だからそれまではレイが優しくしてあげるんだぞ』
『うん、わかった!』

 それまで不安げだったレイの表情はみるみる明るくなった。あのときのことを、俺は今でもよく覚えている。

 それから夕方になり、父と母が帰宅してきた。二人とも衰弱しきった仔猫を見て本当に驚いた顔をした。
 叔父も父も母も、そして俺も。あの仔猫の行く末は分かっていた。だけど幼い彼女だけは、叔父の言葉を信じて仔猫を守るように抱きかかえていた。

 そして仔猫は、その日の夜にレイの腕の中で息を引き取ったんだ──
< 105 / 847 >

この作品をシェア

pagetop