サルビアの育てかた
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理由はよく知らないが、父のアイルと母のセナは何年も前からもう一人子供がほしいと言っていた。
あれは──俺が十歳のときだった。グリマルディ家に、三歳の子が家族としてやってきた。両親がレイという女の子を孤児院から引き取ってきたんだ。
レイはお世辞にも、俺たち家族に容姿が似ているとは言えない。目元がはっきりしていて鼻は高く、どちらかというと可愛い系統だろう。小麦色の肌を持ち、黒い髪の毛はふんわりしている。
グリマルディ家は英国の白人家系であるが、レイはどことなく東洋系の血が混ざっている気がする。
レイの身元は詳しく知らないし興味もない。
家族の中で一人浮いたような存在がいることに、違和感があって仕方がなかった。
俺の両親はレイを溺愛している。当初は二人とも彼女に付きっきりで、俺のことなんて目もくれなくなった。レイは三歳だったから、まだまだ手がかかるのは分かる。それでも、どうして血の繋がらない娘をあんなにも愛せるのか、当時の俺には全く理解できなかった。
あいつは俺にとってただの「同居人」だ。深く関わるつもりはない。
──しかし、俺が十五歳になった頃だ。八歳のレイが、ひょんなことから俺が通うダンススクールへ一緒に行くことになってしまった。兄妹で同じスクールに通うのはなんとなく嫌だったし、俺が踊る姿を見て自分もやってみたい、というレイの言葉も小恥ずかしかった。
軽い気持ちでダンスを始めた奴の中に、すぐ飽きて去っていく連中を何人も見てきた。どうせすぐに「できない」などと言って、あいつも辞めていくのだろう。