サルビアの育てかた
 私はちゃんと、素直な気持ちをあなたに伝えたい。

「私は、ヒルスのこと大好きだよ」
「えっ」
「何かあったら必ず駆けつけるっていう約束、本当に守ってくれたから……」
「あ、ああ。……もう少し早く助けられたらよかったけどな」
「ううん。それでもいいの。あのときのヒルスは、映画に登場するようなスーパーヒーローみたいだったよ」
「俺が……?」

 いつの日かあなたが私に言ってくれたこと。今でもちゃんと覚えている。

『レイに何かあったら、必ず駆けつけるからな』

 それは単純に、妹として受け止めた言葉だった。だけど今は違う。

 全力で約束を守ってくれたあなたの行動が、私にとっては嬉しくて。そして……特別な想いが溢れて。

 頬をほんのり赤く染めながらも、ヒルスの表情は穏やかだ。
 そんなあなたの顔を見ると、いつだって心が踊るの。

「ヒルス、ありがとう。私を助けてくれて」
「ああ、もちろんだよ。俺は、レイのスーパーヒーローだからな」

 彼は少し気取ったように、そんなことを口にする。
 きっと端から見たら笑われちゃうよ。だけどね、私にとっては本当に素敵なスーパーヒーローだから。そんな台詞さえも格好いいよ。

 私の手をヒルスはもう一度握り締めてくれた。絡み合う指先から優しさが伝わってくる。そんな気がした。
 前を向き、ヒルスは再び車のエンジンをかける。

「レイ、帰ろう。父さんと母さんが待ってる」
「うん……」

 気づくと、朝日が眩しい時間帯になっていた。私たちが乗る車は輝かしい光に向かって走り出す。
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