サルビアの育てかた
 胸の奥に芽吹いたばかりの気持ちを必死に押し殺し、私はふと微笑む。

「ねえ、ヒルス」
『うん?』
「毎日電話してくれるから、あの日のことは忘れられそうだよ」
『……そうか、それは良かった。それじゃあ、もう電話しなくてもいいのか……?』

 なぜか、彼の声が小さくなっていった。

 少しだけ、甘えてもいいかな。
 息を小さく吐き、続きの言葉をゆっくりと繋ぎ合わせた。

「ううん……してほしい」
『えっ』
「ヒルスがお仕事で疲れちゃったときは無理しないでほしいの。でも……電話できる日があったら、五分でもいいからこれからもお話ししたいな。……ダメ?」

 自分でも驚くほど甘えたような声。
 電話越しで、ヒルスが咳払いしているのが聞こえてきた。

『あのな……レイ』
「なに?」
『俺に遠慮なんてするなよ。いいに決まっているし、会えない日はいつでも電話する。いいか?』
「うん……分かった。ありがとう」

 ──ねえ、ヒルス。私、今すごく頬が熱くなっているの。あなたの一言一言に心が踊るし、ドキドキさせられるんだよ。
 以前まではあんなに冷たかったあなたが、こんなにも優しくしてくれるなんて、今でも信じられないよ。
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