サルビアの育てかた
 静まり返った診察室の中で、先生は何かを説明しはじめた。
 稀に赤ちゃんの生命力の問題で、心臓が止まってしまうことがある。あなたのせいでは決してないので、自分を責めないでほしい。亡くなった赤ちゃんは早いうちに外に出してあげないとならない。早急に日取りを決めましょう……。

 あのときの先生は、声が震えていた。業務的な話をするだけではない。どう声をかけていいのか、迷っているようだった。

「ご主人にも説明しなければなりません。今から来てもらうことは可能ですか?」
「……主人は今、仕事中ですので……」
「大事なお話です」
「それなら、わたしから、します……」

 ショックで、動機がして、頭が真っ白になった。

 説明をするとは? 何をどうするのか?

 今聞いたことがとても信じられない。信じたくない。それなのに……溢れる涙を止めることができない!

 セナの心は真っ黒に染まる。
 帰り道の記憶など殆どなかった。大粒の雨が降り、胸の奥までずぶ濡れになってしまう。
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