サルビアの育てかた
 そこで目を覚ます。飛び起きた私の全身は、汗でぐっしょり濡れていた。息も乱れる。全身を流れる血が、まるで沸騰しているかのように身体中が熱かった。

「怖い……」

 真っ暗な部屋で私は震えた。恐怖で動けない。布団に身を隠し、あの悪夢から逃れようとした。だけど何度も何度も同じ夢を見ると、頭の中から恐怖の映像が離れなくなるの。
 そのときに、ふと思い出すのが彼の顔。
 震えながらも、枕元に置いてあった携帯電話に手を伸ばす。時刻は深夜の二時過ぎ。

 ──寝てる、よね……?

 いくらなんでもこんな時間に電話したって、彼が出てくれるはずはない。だけど、とにかく声だけでも聞いてこの恐怖から逃れたかった。

『俺に遠慮なんてするなよ』

 彼が言ってくれた優しさを思い出す。

 こんな夜遅くだけど……ごめんね。遠慮、しない……。

 彼の番号を探し、コールしてみる。携帯電話からは無機質な呼び出し音が虚しく響くだけだ。
 ドキドキしながら待ってみたけど、十回ほどコールしたところで留守電に繋がってしまう。

「そうだよね。寝てるに決まってるよ……」

 出てくれるかもしれないという期待が、ここで打ち砕かれてしまった。
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