サルビアの育てかた
「ヒルス」
「な、何だよ」
「ありがとう」
「えっ」
「私、たった今まで怖くて仕方がなかったのに、ヒルスが来てくれたおかげで気持ちが落ち着いたよ」
「……そうか?」

 チラッと横目で私の顔を見るヒルスは、まだ頬が赤いまま。

「お前は横になってろ」

 そう言うとヒルスは、そっと布団から出ていってしまった。私の肩が出ないように、布団を優しく被せてくれる。

「ヒルスはどうするの?」
「レイが寝るまでここにいてやるから」

 するとヒルスは、すぐ近くにあった椅子をベッドの真横に置いて座った。

「本当はずっといてやりたいけど、明日も早いからな」
「うん……そうだよね。ごめんね」

 ちょっと切ない。でも私が寂しがっていたら、ヒルスを困らせちゃう。無理して来てくれたんだからわがままなんて言えない。必死に今の心情を隠してみせた。
 こんな私を眺めながら、ヒルスは大きくため息を吐くの。

「レイ」
「うん?」
「謝るなって、何回言えば分かるんだよ」
「あ……ごめ……」

 途中で続きを言うのをやめにする。
 眉間に皺を寄せて、ヒルスは少し怒ったような、機嫌が悪いような表情になっていたから。

「俺が好きでここに来たんだ。それでレイが安心して眠れるなら、明日仕事があろうがどうにでもなるんだよ。分かったか?」
「う、うん。分かった」

 ちょっと乱暴な言いかただけど、彼の優しさがじんわりと伝わってくるの。こういう不器用な思いやりが大好きだった。
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