サルビアの育てかた
「ヒルス」
「はい」
「レイと話したいことがあるんだけど……」

 ジャスティン先生はヒルスに向かってウインクをしてみせた。まるで何かを「察しろ」と言うかのように。

 ──あ。もしかして。

 今から何を話されるのか容易に想像できた。
 ヒルスも分かったようで、大きく頷いた。

「レイは僕と二人で話すのには少し抵抗があるかな」
「えっ?」

 ジャスティン先生はなぜか気まずそうな顔をしている。

「まだあの一件があったばかりだからね。もし嫌だったら、ヒルスにも同席してもらいたい」

 それを聞いて私は唐突に理解した。

 ジャスティン先生に気を遣われてる……。
 ヒルスが慰めてくれたから、私はもう気にしていない。ジャスティン先生は信頼できる人だし、こういうことで変に距離を置いてほしくない。
 それに「あの話」をするなら、むしろ二人でお話がしたかった。
 眉を八の字にする先生の目を真っ直ぐ見つめ、私は小さく首を横に振る。

「私はもう平気ですよ。今までどおり接してほしいです」
「……レイ」

 ジャスティン先生は目を細め、僅かに目尻が潤っていた。

「あ……それじゃあ先生。わたしたちは外で待っていますね」
「ありがとう、ヒルス、フレアも」

 ヒルスとフレア先生は空気を読むかのように、そそくさとスタジオの外へ出ていった。他の先生たちも、隣の練習場にそれぞれ移動していく。

「レイ、それじゃあ少しだけお話ししよう」
「はい」

 これから大事な話をするんだよね? どう話したらいいのかな? 
 迷いながらも、私はしっかり先生とお話ししようと決心した。
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