サルビアの育てかた
「さっきから変だな。どうしたんだよ」
「……うん。変よね。わたし、あなたのことを考えると、最近おかしくなるのよ」
「え?」
「ヒルスがレイを心から大切に想っているのは知ってる。でもね、わたし、そんなあなたのことが好きなの」
「……好きって? それは、どういう意味だ」
「そのままの意味」

 フレアはまた優しい表情に戻り、顔をうんと近づけてきた。吐息がかかるほどの、近距離。
 胸がドクンと鳴った。

 すると、フレアは突然──俺の口元に唇を重ねてきた。あたたかくて柔らかい感触に、思わず固まってしまう。

「……わたしの気持ち、伝わった?」

 何も言えない。答えられない。ただただ呆然としてしまう。

 こんな俺を眺めながら、フレアはクスっと笑った。サッと背中を向けて手を振った。

「先に帰るね。また明日!」

 走り去る彼女の後ろ姿を、俺はいつまでも見つめていた。唇に手を当てると柔らかい感触がまだ残っている──そんな気がした。

(……俺、今、キスされたか?)

 頭だけは、今の状況がどういうことなのかまだ把握できない。

『わたしの気持ち、伝わった?』

 フレアはたしかにそう言った。戸惑いと驚きの文字が錯乱してどうにも止まらない。

 夕陽に照らされる俺の顔は、とんでもなく熱くなっていたんだ。
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