サルビアの育てかた
──その後は微妙な雰囲気のまま、ヒルスは私を家に送るために車を走らせた。帰りの車内はいつもどおり他愛のない会話をしていたけど、彼の横顔はずっと沈んでいるように見える。
途中で降り始めた小雨が車内の空気と重なり、まるで心を冷たく濡らしていくように感じた。
それから一時間ほど経って家に到着する。父が玄関まで出迎えてくれた。
「おかえり、レイ」
「お父さんただいま!」
私は父の隣に立ち、おもむろにヒルスの方を振り返る。
「ヒルス、少し寄っていくか?」
「いや、このまま帰る。明日も早いんだ。次の休みにまた来るよ」
「そうか。いつも頑張っているな。セナがこれをお前にと」
父が差し出したのは、ダンボール箱に詰められたトマトやブロッコリー、玉ねぎなど、一人分にしては多すぎる量の野菜だった。ヒルスが一人暮らしをしてからしっかり自炊しているのを知った母は、度々大量の食材を用意してあげてる。
「またこんなにたくさん。俺、一人なんだけど」
「離れて暮らすお前のためだ。持っていきなさい」
「まあ、ありがたく受け取っておくよ」
また遊びに行ったとき、ヒルスの作った美味しいご飯を食べたいなあ。でも、今までみたいに歓迎してくれるのかな……。箱の中の野菜を眺めながら、そんなことを考えてしまった。
「レイ、おやすみ」
私が浮かない顔をしていると、ヒルスは明るい声で言うの。いつの間にか私に向けてくれるようになった、穏やかな表情で。その笑みを見ると、胸がキュッとなって自然に心があたたまる。
「おやすみ、ヒルス」
雨の雫が静かに肩を濡らす中、ヒルスは最後まで笑みを絶やさなかった。
でもなんとなく、彼が運転する車を見送ったときは寂しさが残された気がした。
ガーデンに咲く『サルビア』は寒さにも負けず、冷たい雨をたくさん浴びながら私たちと一緒に彼を見送った。
途中で降り始めた小雨が車内の空気と重なり、まるで心を冷たく濡らしていくように感じた。
それから一時間ほど経って家に到着する。父が玄関まで出迎えてくれた。
「おかえり、レイ」
「お父さんただいま!」
私は父の隣に立ち、おもむろにヒルスの方を振り返る。
「ヒルス、少し寄っていくか?」
「いや、このまま帰る。明日も早いんだ。次の休みにまた来るよ」
「そうか。いつも頑張っているな。セナがこれをお前にと」
父が差し出したのは、ダンボール箱に詰められたトマトやブロッコリー、玉ねぎなど、一人分にしては多すぎる量の野菜だった。ヒルスが一人暮らしをしてからしっかり自炊しているのを知った母は、度々大量の食材を用意してあげてる。
「またこんなにたくさん。俺、一人なんだけど」
「離れて暮らすお前のためだ。持っていきなさい」
「まあ、ありがたく受け取っておくよ」
また遊びに行ったとき、ヒルスの作った美味しいご飯を食べたいなあ。でも、今までみたいに歓迎してくれるのかな……。箱の中の野菜を眺めながら、そんなことを考えてしまった。
「レイ、おやすみ」
私が浮かない顔をしていると、ヒルスは明るい声で言うの。いつの間にか私に向けてくれるようになった、穏やかな表情で。その笑みを見ると、胸がキュッとなって自然に心があたたまる。
「おやすみ、ヒルス」
雨の雫が静かに肩を濡らす中、ヒルスは最後まで笑みを絶やさなかった。
でもなんとなく、彼が運転する車を見送ったときは寂しさが残された気がした。
ガーデンに咲く『サルビア』は寒さにも負けず、冷たい雨をたくさん浴びながら私たちと一緒に彼を見送った。