サルビアの育てかた
 感心していると、突然後ろから話しかけられた。

「おう、ヒルス。お前の妹は頑張っているか?」

 振り返ると、そこにはライクがいた。サングラスをかけていて、がっしりした両腕には派手なタトゥーが刻まれている。俺と同じ時期にダンススクールに通い始め、特待クラスの仲間ではあるが──正直、あまりこいつのことは好きじゃない。むしろ苦手だ。

 長身のライクは、少し屈みながら窓を覗き込む。

「お前の妹はどの子だよ?」

 ジロジロと中を見ながら、なぜか興味津々に訊いてきた。

「あの、一番端っこにいる背の低い奴だよ」
「端にいる奴……? もしかして、あの、黒髪ツインテールの子か?」
「そうだよ」
「へぇ」

 ライクは一瞬だけ、声が明るくなった。サングラスが邪魔をして表情はよく分からないが、なんとなく機嫌がいい気がする。

「すげぇな、ダンスを始めたばかりなのに、綺麗なステップだ」
「まあ、初めてにしてはなかなかいいとは思う」
「さすがヒルスの妹だなぁ。でも、なんだ。あまりお前とは似てないな?」
「……そうか?」

 俺はドキッとする。その疑問は、むしろあって当然だ。誰がどう見ても俺たちは似ていない。

 ──血の繋がらない兄妹であることも、レイが孤児院から来た娘だということも、家族以外は誰も知らない。レイ本人すらグリマルディ家の本当の娘だと思っている。だから余計な話は他の誰にもできないんだ。

 だがライクは、それ以上深く問いかけてくるわけではなかった。レイを見ながら、なぜだか喜んでいるようだ。

「知らなかったぜ、お前にあんな妹がいたなんてな! レイは今まで見た誰よりも可愛いな……」
「は」

 この言葉に俺は寒気がした。

 いや、こいつは今年で十七だ。九つも歳が下のレイを、そういう目で見るはずがない……。

 俺は首を振り、ライクの背中を軽く叩いた。

「そろそろ休憩が終わる。戻るぞ」

 促すと、ライクは気持ちを切り替えるように頷いた。
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