サルビアの育てかた

 時刻を確認すると、まだ七時前だった。レイは起きているかな、と思いつつも俺はまたもや携帯電話を手に取り、ぼんやりする頭でゆっくりとメッセージを打ち込む。

《レイ、起きてるか》

 十分ほど返信が来なかったが、その後すぐに着信があった。レイからの電話で、俺は苦しいながらも心だけは躍る。

『ヒルス、おはよう』
「レイ……すまん、こんな朝に」
『あれ、声どうしたの?』
「……ちょっとな」
『もしかして、体調崩しちゃったの』
「そうだ。よく分かったな?」

 こちらが説明しなくとも、難なく状況を把握してくれるレイが、大袈裟かもしれないが女神に思えた。それほど今の俺は弱りきっている。

『一人なのに大変だよね。私、今日は用事もないし看病しに行くよ?』
「いいのか」
『ヒルスのためだよ、気にしないで。食べたいものとか、買うものがあったらメッセージで送って』
「ああ、分かった」
『今から支度するから……二時間くらい待ってもらうことになるけど平気?』
「いいよ、焦らなくて」
『でも心配だからなるべく急ぐね』
「ありがとう、レイ。……気をつけておいで」

 心身ともに辛くても、彼女との通話を終えると俺の心は物凄く安らいだ。

『ヒルスのためだよ』

 そんななにげない彼女の一言が、頭の中でリピートする。無意識のうちに頬が緩んだ。
 彼女が来てくれるまで、もう一眠りしよう。
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