サルビアの育てかた
「ねえ、ヒルス」
「……うん?」
「小さい頃、熱を出したときにお母さんがよくチーズリゾットを作ってくれたの、覚えてる?」
「ああ、懐かしいな。濃厚な味でライスが柔らかくて、体調が悪くてもあれだけは食べられたんだよな」
「私も好きなの。今日はリゾット作ってあげるね。この前お母さんから作りかたを教えてもらったんだよ」
「本当か。レイの手作りならいくらでも食べられそうだ」
ヒルスはにこりと微笑み、頷いた。凄く穏やかな眼差し。この表情が、私はたまらなく好きだ。
別のグラスに飲み物を注ぎ、ヒルスの手の届く所に置いた。濡れていた床を雑巾で拭き取り、ヒルスは汗をたくさんかいていたので着替えも用意した。
「レイ、助かるよ」
「私が体調崩したときに、お母さんがしてくれたことを真似してるだけだよ」
「でも、なかなかできることじゃないだろ。本当に、レイが来てくれてよかった……」
ヒルスは安心した表情を浮かべ、そっと目を閉じた。
本当は訊いてみたい。「私じゃなくてフレア先生に頼ってもいいんじゃないの?」って。
ヒルスは時折苦しそうな声を漏らしながらも、やがて寝息を立て始めた。弱ってる姿も愛おしいと思ってしまう。しばらくその寝顔に見惚れていた。
私はあくまで彼の妹。ちゃんと血が繋がってる普通の兄妹だと思っている「ふり」をしないとダメなの。余計なことを訊いたらダメだよ……。
小さなため息が漏れた。
「ごはん、作ってくるね」
眠るヒルスに声をかけてから、私は一度部屋を出る。数歩離れた場所にある共用キッチンで、準備を始めた。朝の九時過ぎだから、誰も使っていない。
どんなに彼のことを好きでいても、この想いを打ち明けるわけにはいかない。妹として兄の幸せを願わないと。もう、ごちゃごちゃ考えるのはおしまい。
とにかくヒルスが早く元気になるように、美味しいリゾットを作ってあげなきゃ。
キッチンの窓から差し込む光が、ちょっとだけ眩しく感じた。
「……うん?」
「小さい頃、熱を出したときにお母さんがよくチーズリゾットを作ってくれたの、覚えてる?」
「ああ、懐かしいな。濃厚な味でライスが柔らかくて、体調が悪くてもあれだけは食べられたんだよな」
「私も好きなの。今日はリゾット作ってあげるね。この前お母さんから作りかたを教えてもらったんだよ」
「本当か。レイの手作りならいくらでも食べられそうだ」
ヒルスはにこりと微笑み、頷いた。凄く穏やかな眼差し。この表情が、私はたまらなく好きだ。
別のグラスに飲み物を注ぎ、ヒルスの手の届く所に置いた。濡れていた床を雑巾で拭き取り、ヒルスは汗をたくさんかいていたので着替えも用意した。
「レイ、助かるよ」
「私が体調崩したときに、お母さんがしてくれたことを真似してるだけだよ」
「でも、なかなかできることじゃないだろ。本当に、レイが来てくれてよかった……」
ヒルスは安心した表情を浮かべ、そっと目を閉じた。
本当は訊いてみたい。「私じゃなくてフレア先生に頼ってもいいんじゃないの?」って。
ヒルスは時折苦しそうな声を漏らしながらも、やがて寝息を立て始めた。弱ってる姿も愛おしいと思ってしまう。しばらくその寝顔に見惚れていた。
私はあくまで彼の妹。ちゃんと血が繋がってる普通の兄妹だと思っている「ふり」をしないとダメなの。余計なことを訊いたらダメだよ……。
小さなため息が漏れた。
「ごはん、作ってくるね」
眠るヒルスに声をかけてから、私は一度部屋を出る。数歩離れた場所にある共用キッチンで、準備を始めた。朝の九時過ぎだから、誰も使っていない。
どんなに彼のことを好きでいても、この想いを打ち明けるわけにはいかない。妹として兄の幸せを願わないと。もう、ごちゃごちゃ考えるのはおしまい。
とにかくヒルスが早く元気になるように、美味しいリゾットを作ってあげなきゃ。
キッチンの窓から差し込む光が、ちょっとだけ眩しく感じた。