サルビアの育てかた
「ヒルスは自分の気持ちに気づいてないの?」
「何が」
「本当は戸惑っているんじゃない? あなた自身が彼女を想う気持ちに……」
「はあ? 待ってくれよ。あいつは俺の妹だぞ。意味が分からない」
「あなたを見ていると、あの子がヒルスの妹だってことにいつも疑問を感じるのよ」

 淡々とした態度で話し続けるフレア。
 俺は内心ギクリとする。

「あの子の話をしているときのヒルスの顔は優しさで溢れているわ。いつだって一番に考えているのは彼女のことよね」
「……」

 どう答えたらいいか分からなかった。

 たしかに俺は、レイのことになると何か特別な想いが湧き出てくるような自覚がある。だけど、これが一体どういう感情なのかはっきりさせたくないんだ。義理でも俺は、レイの兄でいなければならないから。

「ヒルス、ひとつだけ訊いてもいい?」
「なんだよ?」
「レイは──本当にあなたの妹、なの?」

 小さい声でありながらも、フレアは強い口調でそんなことを問いかけてくるのだ。
 女の勘、というものだろうか。俺は動揺を隠せず、わざと目を逸らした。

「失礼かもしれないけど、兄妹なのにずいぶん似ていないわ。髪の色も瞳の色も、顔も……なんとなく、レイは東洋系に思えるの」

 俺は首を横に振る。容赦なく疑問を投げつけてくるフレアに降参寸前になっていた。

「待ってくれ。本当に俺とレイは、普通の兄妹だよ」

 自分でも信じられないくらい声が震えてしまう。

「……本当?」

 顔をしかめ、物凄い目力でフレアはじっと見つめてくる。
 俺の額からじんわりと汗が滲み出てきた。

「本当、だ」

 唸るように俺は答えるが、当然フレアは納得したような態度にはならない。

「正直に教えて。そうじゃなきゃわたし、あなたを諦められそうにないの……。これ以上迷惑かけたくないのに」

 酷く沈んだ声になると、フレアは俯いてしまう。
 その様子を見て、俺は心苦しい想いに駆られる。
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