サルビアの育てかた
 フラットから歩いて数分の場所にある小さな公園を通りかかったとき。
 公園の中央でイヤホンを耳に当てながら、一人華麗なステップを踏む少女がいた。
 夕陽が彼女の姿をライトアップする。

 俺は思わず目を見張った。

 彼女が全身をしなやかに動かし、美しく回転する度に綺麗な黒髪のツインテールも舞い踊る。そんな光るダンスを見た瞬間、俺の胸は高鳴るんだ。
 公園内にゆっくりと足を踏み入れ、輝くステージがよく見える所で立ち止まる。
 俺の存在に気づいた彼女は目を大きく見開いた。
 それでも何も言わずに舞い続ける。オレンジの夕陽が描く影と重なり、彼女のダンスは幻想的なパフォーマンスを作り上げていた。
 いてもたってもいられない。隣に並び、俺も一緒になってステップを踏み始めた。
 イヤホンから微かに漏れて聞こえてくるのは、彼女が初めて個人大会に出場したときと同じ曲『SHINING』だった。
 あの日と同じ振り付けで踊る彼女は、今はより一層輝いて見える。
 いつぶりだろう。こうして彼女と一緒にダンスをするのは。感極まり、俺は無我夢中で踊り続けた。
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