サルビアの育てかた
 お墓に到着する前、一組の老夫婦が前方から歩いてきた。杖をついて歩くお爺さんを片手で支えながら、お婆さんは優しい笑みを浮かべている。二人の手には色とりどりの花束が握られていたんだけど、私たちの横を通りすぎる手前でお婆さんの手から一輪落ちてしまう。二人とも気づく様子がなかった。

「落ちましたよ」
 ヒルスは一輪の黄色い花を拾い、お婆さんにそっと手渡す。

「おや、ありがとうねぇ」

 皺が刻まれた優しい笑顔で、二人はゆっくりと頭を下げる。

「お墓参りに来たのかい?」
「はい。……家族の墓参りです」
「そうかい。わたしらも、天に召された子供の墓参りに来てねぇ。もう半世紀も前に事故で亡くなったけど未だに毎年来ているんだよ」
「……そうなんですね」

 お婆さんのその言葉に、私は複雑な気持ちになってしまう。

「ばあさん、そんな重い話をしたらこの人たちを困らせちまうよ」
「でもねぇ、おじいさん。大切な人を想う気持ちは、誰にでも共通してありますから」

 お婆さんは頬に笑いの皺を刻む。そして、ゆったりとした口調でこんなことを問いかけてきた。

「居なくなった家族がもし生きていたら、と考えたことがあるかい?」
「えっ」

 この質問に、私の胸がドクンと音を立てた。
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