サルビアの育てかた
 顔を上げ、光輝く墓石を見つめながら私は静かな口調でヒルスに語り始める。

「本当はちょっと寂しかったの」
「えっ?」
「もしリミィが、お姉ちゃんが生きていたら、私はこの家の娘として生きて──生まれてこなかったんじゃないかなって」

 家族として私が迎えられたきっかけは、紛れもなくリミィの死にある。その事実だけは、どんなに綺麗事を並べようと変わらない。
 考えれば考えるほど、私の胸の奥が切なさで埋め尽くされる。

「寂しいことなんて何もないよ、レイ」

 柔らかな声で私に微笑みを向ける彼。 

「レイは今この瞬間も紛れもなく俺の隣にいる。それに今までもこれからも、父さんと母さんのそばにいる娘はレイなんだ」

 ヒルスはそっと私の肩を抱き寄せた。そしてこの寂しさを払うかのように、私の頭を撫でてくれるの。

「ま、俺も偉そうに言ってるけど。一度だけ、リミィが生きていたら俺たちとどんな生活をしていたんだろうと考えたことはあるけどな」

 そんなことを言われたら、どんな顔をしていいか分からなくなってしまう。複雑な気持ちになってヒルスを見ると、彼は微笑んだまま続けた。

「でも……さっきのお婆さんも言っていたが、今ある幸せを大事にしないといけない。そうじゃなきゃ、リミィが安心して天国で眠れないよ」
「……うん。そうだね」
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