サルビアの育てかた
 彼の言葉は、ひとつひとつが私にとっての支えになる。
 ……訊いてもいいよね?
 私は彼に向かってわざとらしく小首を傾げた。 

「ヒルスの今の幸せって何?」

 何となく、答えは分かるよ。だけど、あなたの言葉で直接伝えて欲しい。
 少し照れたように視線を外しながらも、ヒルスはちゃんと素直な気持ちを口にしてくれた。

「決まっているだろ。レイが隣にいることが俺の幸せだ」

 ──ねえ、ヒルス。それは、どういう意味で言っているの? 単に義理の兄としての言葉なのか、家族としてなのか。それとも……別の意味があるの? 

 訊いてみたかった。だけど私は、彼の妹でいなきゃいけない。だからそれ以外は何も望まないよ。
 私がヒルスの妹としてここにいることが彼の幸せだとしたら、それ以上の喜びなんてない。
 だから私は……彼の妹のままでいい。

「ヒルス……ありがとう」

 目を細めて、彼の言葉を素直に受け止めた。

「今ここにいられる幸せを、私も改めて感謝しなきゃね。お姉ちゃんのこともいつまでも想い続けたい。来年も再来年もその先もずっと、ここに来たいな」
「ああ。いつでも、また一緒に来よう」

 そうして私たちは、たくさんの『サルビア』の花をひとつずつ丁寧に、亡き家族に捧げた。
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