サルビアの育てかた
 少し風が吹き、木の葉たちが静かに音を奏でる。それと同時に冷たい空気も流れてきた。
 ヒルスは何かを思うように、遠くの方を見やっている。それから彼は突然足を止めた。反射的に、私も並んで立ち止まる。
 
「どうしたのヒルス、もう疲れちゃった?」
「いや、そうじゃないんだ」
「うん?」
「レイとダンススクールに通っていた頃を思い出して、懐かしいなと思ってな」

 いつにもなく、ヒルスは真剣な表情だった。
 
「そうだね。あの頃は……大会やイベントに向けて、毎日一緒になって練習してたよね」

 今はもう、戻らない日々。ステージに上がる機会がなくても、気ままにヒルスと二人で踊れるならそれでいい。
 そう思っていた。だけど──

「レイに話したいことがあるんだ」

 ヒルスは私の目をじっと見つめてくるの。ギュッと手を握り返され、鼓動が高まる。
 彼の手が小刻みに揺れていた。

 そんなに緊張しないでいいよ。私は小さく彼に頷く。

 安堵したようにヒルスはゆっくりと語り始めた。彼にとっても、私にとっても、ダンス仲間にとっても、大切な話だった。
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