サルビアの育てかた


 普通の日常が幸せに溢れていた。こんな何気ない毎日が続いたらいいなって、心のどこかで思うようになった。
 だけど、やっぱり父のことが気がかりで ……違和感が消えないまま徒に時が過ぎていく。
 母も何かを感じてるみたいで、たまにどっと疲れた顔をする。だけど私たちは、その件に関してはっきり話をすることができなかった。

 ある日の夜。いつものように、私は寝る前にヒルスと電話で話をしていた。
 楽しいはずのこの時間。今日は、心が沈んでしまう。

『──今度ロンドン市内で大きなダンスイベントがあるんだ。そこにゲストとしてレイも呼びたいとジャスティン先生が言っていたぞ。俺とペアで踊るか?』
「……」

 電話の向こうで、ヒルスが楽しそうに何か話をしている。
 意識が半分どこかへ飛んでしまって、彼の話が全然入ってこない。
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