サルビアの育てかた
レイは短く息を吐き、表情を固くして初めて胸の内を語りはじめた。
「最近、お父さんの様子がおかしいの」
「……父さんが? どうおかしいんだ?」
「例えば──ついさっきまで話したことをすぐ忘れちゃうの。お買い物へ行こうって誘っても、準備もしないで数分後にはテレビを見て寛いでいることがあったんだよ。それに、ぼんやりしている時間も増えた気がするの。物忘れだって増えたし、失くしものもよくするようになったんだよ」
「ううん、それは……父さん、仕事で疲れているとかじゃないか?」
「私も最初はそう思ったよ。でもね」
続きの言葉を繋げる前に、レイはとてつもなく辛そうな表情を浮かべた。それでも、懸命に話そうとしてくれる。
「お父さん、私に向かって『リミィ』って呼んだの」
「……なんだって?」
「寝ぼけてるんだって 思いたかった。だけど私の目を見て真剣に言うから、本気でリミィだと勘違いしているみたいだった。大きくなったな、会いたかったよ、なんて言うの……」
レイはそこまで話すと、言葉を詰まらせた。目線を下に落とし、肩を震わせる。