サルビアの育てかた
 父と母はあと一時間は起床してこないだろう。レイと向かい合い、二人で朝食を取ることにした。
 食事中、殆ど会話はしなかった。フォークと陶器がぶつかる音が時折鳴り響くだけで、ほぼ無音の時間が流れる。
 スローペースで卵焼きやサラダを全て平らげると、俺はホットティーで身体をあたためた。
 レイも無表情で食後の紅茶を味わっている。 

 ノーメイクのレイの目元が少しだけ赤く腫れていることにふと気がついた。綺麗な褐色の頬も、僅かにくすんでしまっている。
 そっとカップを置いてから、俺は口を開いた。

「レイ……元気か?」

 紅茶を飲む手を一度止めると、レイは俺に目線を向けた。

「えっ? うん、大丈夫だよ。……ごめんね、昨日のこと」
「どうして謝るんだよ」
「子供みたいに泣いちゃった」
「俺からしたらまだまだ子供だよ」
「あ、またそういうこと言う」

 口を尖らせ、いじけたような反応を見せるレイ。けれど、すぐに真剣な顔つきになるんだ。

「それより、ヒルスは平気?」
「俺は全然平気だけど」
「でも……今日は疲れた顔してるよね」
「いや、そんなことないよ」

 たった一晩寝つけなかっただけで、レイには分かってしまう。俺は心の中で苦笑する。
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