サルビアの育てかた
「大丈夫か」

 俺はすかさず彼女を抱き寄せた。

「……あのさ、ヒルス」
「うん?」
「こうやってハグしてもらえると、すごく安心する。ヒルスの優しさが伝わってきて、心が穏やかになるよ」
「何言ってるんだよ。俺は別に優しくない。ただ、レイが寒そうにしていたから……」
「でもね、こうやって抱き締めてくれるお兄ちゃんって、そういないと思うよ? いつもさりげない気遣いもしてくれるよね。それに、家族のことを大事に想ってくれるでしょ? 私、そんなヒルスが大好きだよ」

 レイは微笑みながら、俺の方を見上げた。朝陽に照らされる彼女があまりにも綺麗で、思わず見惚れてしまう。
 彼女が口にした「大好き」という単語に、俺は敏感に反応していた。レイのその言葉にはどんな感情が込められているんだろう……。胸が高まってどうしようもない。心の奥がぐんと熱くなるこの想いは一体何なんだろう。

 ──いや、妹に対して何をバカなことを。レイが言うことに深い意味なんてあるわけがない。

 一瞬でも愚かな妄想をした自分に嫌悪感を抱く。首を横に振り、自分の気持ちを誤魔化そうとした。
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